2度目…といっても1度目は小学校高学年のころで、もちろんのことほとんどまったく完全に内容を覚えていない。なんだかむじゃむじゃとした、暗い気配だけ。
山の奥の奥に町がある。それも世間とはまったく別の質と速度で構成された町。そこに埋没すること、こんなに楽しいことがほかにあるだろうか。徹底的に堕落して、塵芥の中でだらだらと過ごし、腐った雑巾のようになって死ぬことに憧れがある。だから「坑夫」も銅山に入ってからがやたら面白い。主人公はどうでもよいから、もっと町ついて克明に描写してほしいと布団のふちっこを噛みながら読んだ。彼らといっしょに窓からジャンボーを眺めたい。
廃墟に住まう快楽。それが僕にとっての「坑夫」だ。ただ帳面をつけるだけという楽な立場を得られたのに、どうして主人公は5か月足らずで山を出たのか? まったく理解できない。