激しく嫉妬する作品って、ありますよね。ないですか? 僕はあります。
ベストの映画か?と言われれば、そうじゃない、です。
たとえばカヴァレロヴィッチの「尼僧ヨアンナ」やドライエルの「奇跡」、ポランスキーの「袋小路」、成瀬の「浮雲」、タルコフスキーの「ノスタルジア」なんかに比べると、二枚も三枚も落ちます。でも僕はドライエルやポランスキーには嫉妬しないけど、「デッドマン」を撮った、という一点において、ジャームッシュに激しく嫉妬しますね、いや、正直なところ。
同じようなニュアンスで、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を書いた村上春樹にも嫉妬する。村上春樹に嫉妬しているんじゃないですよ、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を書いた彼に、嫉妬するのです。それはえーっと、作家本人ではなくて、作品に嫉妬するというか、あー、そんなのありえないか?
でも、そうなんです、とにかく。