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村上春樹の「女のいない男たち」、冷静に読むとけっこうムラがありますね。文章力はほんとに余人にはたどり着けない地点に達していると思いますけど。
1位は圧倒的に「木野」。 その他はまあ、いまひとつでラストの「女のいない男たち」はまえがきで村上春樹本人が気合い入れているほど面白くない。村上はときどき思いっきり外しますね。なんだっけ、カフカみたいなのがせむしの女の子と出会うやつ。あれもつまらなかった。本人が楽しく書いているのはよくわかるのですが。 それはともかく、「木野」もそうですけど、全体に「反省小説」でありますね。テーマは「反省」です。 そういや、「多崎つくると色彩をもたないなんとか」(失念)もみんなが反省する小説でしたね。 反省するのは結構ですけど、小説が前に進むスピードは遅れますね。 「海辺のカフカ」も「1Q84」も反省、というかかっこよくいうと、「過去と記憶」がテーマになっています。いや、やっぱり反省がいいな。なんか登場人物がみんな反省したり、よく過去のことを思い出すんだよね。それでたしかに深みというか奥行きが出るといえば出るんだけど、それは本当に小説として必要な奥行きなのか?という気がしなくもない。ただのト書きでは?、みたいな。 村上春樹の魅力というと、前に前に進んでゆくドライブ感みたいなのがあったけど、最近はすっかり失われてしまったような気がするのは、やはり、やたらにみんな反省するからではないか?(笑) ★ 村上春樹と対極に位置するのが、保坂和志とその一派というか、その真ん中らへんのがあってもいいような気がするけど、それはたぶんあんまり価値がないんだろうな。 村上春樹が好きというとなんかすぐに笑われたりするんですけど、「でも保坂和志とか古井由吉も読みますよ」とかって言い返すと、どっちも読んでいないので言い返すこともできないでいる同年代のおっさんたちの顔を見るとうんざりしてきますね。 それはともかく、保坂一派の磯﨑憲一郎の「往古来今」を読む。 「自己同一性が曖昧で、お互いに侵食しあっているという部分で、5篇全てつながっているんです。」と作者自身が語っているが、それがどうした?と突っ込みたくなるも、いずれも面白い。 出色は「脱走」か。 磯﨑や保坂の小説を読んでいると、「なんだって小説になってしまうのであり、小説とは書くという行為の中に存在する」という彼らの方針がよくわかる。たとえば今、僕が書いているこの瞬間、背後で息子がスターウォーズのXウィングのおもちゃを振り回しがら「あー」とわめいているのだが、それも小説になるというか、小説的な時間として文字を通じて立ち上がらせることができる。 しかし、何かが足りない。 「往古来今」も登場人物たちがやたらに反省し、後悔する。反省し、後悔するところから行動が始まる。これは先に述べた「女のいない男たち」と同じである。 その意味で、村上春樹と磯﨑憲一郎は似た地点にいるような気がする。 じゃあ、それはどういう地点か? 直観的に、「エロスの退潮と、タナトスの充満」じゃないかと思っている。で、それは今の、そしてこれからの日本をよく表している。 日本は死につつある。 象徴的な意味ではなくて、現実的にだ。2050年には人口が今より3千万人減って、1億人を割るそうだ。今から35年後である。 その残った1億人弱の人たちの多くは65歳以上の高齢者だろう。そんな状況で国体が維持できるのか? にもかかわらず、馬鹿安倍を筆頭とする自民党はもとより、政府全体がなんの策もとろうとしない。外国人労働者に対する壁はいまだに高く、女性や高齢者が安心して働ける環境には程遠い。 労働力の減少が問題になっている。3・11+景気の回復で建設業やサービス業に従事する人間が減ってきているそうだ。UNIQLOはさっそく、アルバイトを囲い込みはじめている。体育会系の人材がほしいから、野球部を創設する企業もあるそうだ。そのかたわら、残業代を払わない就業システムを認めようという動きもある。 ばかばかしくて話にならない。 高齢者介護の現場も悲惨さを極めている。過酷な業務内容に安い賃金。どんどん人がやめている。その一方で、老人ホームの順番を待つ高齢者があふれている。保育園の問題も深刻だが、こっちも厳しい。 少子化の問題も、高齢化の問題も間違いなく日本を滅ぼす。であるのに、政府も企業もほとんどなにもやっていないし、これまでもやってこなかった。民主党政権だって同じだ。 なぜか? 票にならないし、金にならないからだ。 つまり、そこに利権が発生しない問題は棚ざらしにされやすい。高齢介護だって、市場として大きければ良くも悪くも、もっと動きがあるだろう。しかし、市場規模が小さいので、誰も動かない。儲からないからだ。 本当に国のことを長期的な視点で憂えるならば、もっともっとやるべきことはあるはずなんですけどね。 たとえばわれらが名古屋市の河村市長はリニア対策として都心に地上1000メートルのタワーを建てたいそうである。 例えば1000メートルタワーみたいなやつとか、そういう東京から逆ストロー現象を起こすような魅力のあるものをつくっていくかというのは、重要な問題だで。 平成25年12月2日の市長定例記者会見議事録からです。 がはははは。馬鹿すぎる。 まあ、こんなもんですね、政治家というか、首長って。選ぶやつも馬鹿ばかりだからしょうがないといえば、しょうがない。 ★ フジテレビの社長が恋愛ドラマの退潮を嘆いていた。お気づきだろうか、最近のCMでも「男女」という組み合わせは少ない。むしろ「女ひとり」「女+女」という組み合わせが増えている。歌もそうだ。恋愛をテーマにした曲は減り、かわりに人生についての歌(つまり、反省の歌)が増えている。 高齢化し、少子化し、低温化しつつある日本は、エロスではなく、タナトスに覆われているように思える。村上春樹の「女のいない男たち」も、磯﨑憲一郎の「往古来今」も、どこか遺書めいた雰囲気があるのは、そのせいではないか?
by 42_195km
| 2014-04-29 08:54
| 本三昧
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